出典:ドラゴンボール

初めてドラゴンボールを読んだ頃はまだ私も幼く、当初は彼のことも「情けないギャグキャラ」くらいにしか思っていませんでした。しかし自身が成長しそれに伴って幾度も単行本を読み返しているうちに、本作でも屈指の推しキャラへと変わっていったのがこのサタン。子供では良さが分からないとまでは言いませんが、やはりある程度の年にならないと彼の魅力は理解しにくいでしょう。

セルゲームでの初登場時には情けない姿が目立っていたとはいえ、しかし単なるギャグ要員には留まらず「チャンピオンがこのまま逃げたんじゃいい笑いもんだぜ!」と怖がりながらも16号の頼みを引き受ける一幕があり、その時点で既に正義感とプライドの片鱗は見せていました。そうした善性がよりハッキリと描写されたのが続くブウ編で、デブブウとの共同生活は短いながらも非常に印象的なシーンです。ブウが改心したのもサタンの人柄ゆえですし、小心者で調子に乗りがちではあっても決して悪人ではなく、性根は真っ直ぐな英雄気質というバランスは極めて魅力的でした。ビーデルさんから父親と魔人ブウとの関係性について問われたピッコロがサタンについて評した「力はオレたちにかなわんかもしれんが、やはりおまえの父は誇り高い世界チャンピオンだ…」はDB全体から見てもトップクラスに好きな台詞。「戦闘力が全て」と言っても過言ではない本作の価値観にただ一人迎合しなかったサタンは、物語の特異点として不思議な輝きを放っていました。

DBと言えば戦闘力のインフレに次ぐインフレが語り草とはいえ、それを繰り返した末に辿り着いた最終決戦において勝利の鍵を握っていたのもこの男。いつも通り最強の悟空達による超パワーで悪党をぶっ飛ばしました! …ではなく、一般人であるサタンの人望が最後の決め手になったという作劇は本当に見事で、私が本作の大ファンになった理由の一端を担っているのは間違いありません。「おめぇはホントに世界の…救世主かもな!」で締め括るラストは神懸かり的な完成度でした。