1990-1996年連載のマンガ 週刊少年ジャンプ

私はゲームや漫画を趣味とするインドア派のオタクゆえに運動は苦手で、スポーツ漫画もそれほど好きなジャンルだとは言えません。そのうえ当時はバスケに関する知識や興味もほとんど持っていなかったため、凡百の漫画であれば大した魅力を感じず途中で脱落したことでしょう。しかしこのスラダンはそんなネガティブな前提条件など吹き飛ばすほどの圧倒的な面白さを誇り、運動音痴の私ですらも一切の苦手意識を感じずあっという間にハマりました。連載終了から既にかなりの年月が経過しているのでその後も多種多様な漫画を読んできましたが、しかしスポーツを題材とした作品で一番好きなものをひとつ挙げろと言われれば、間違いなく本作が筆頭候補となります。

井上先生自身がバスケットマンであるためかバスケの基本的な描写が凄まじく綿密で、ド迫力なダンクシーンなどよりも、むしろパスやディフェンスといった紙面では地味に映りがちな部分にこそリアルな臨場感を感じられるのが凄いところ。メインとなる試合の魅せ方も序盤こそ多少ぎこちない雰囲気でしたが、中盤から終盤にかけては加速度的に進化していきます。その集大成とも言える最後の山王戦は間違いなくスポーツ漫画史上に残る名勝負であり、漫画という静止画の媒体であるにも拘らず、まるで眼前を選手達が動いているかのような錯覚すら味わえました。特に試合終了間際におけるラスト12秒の演出は至高。結果を知っている今でも、読み返すたびに息を呑むほどです。

スラダンはリアル寄りの漫画とはいえ主役である花道の身体能力はだいぶ現実離れしていますが、その天才性はあくまでフィジカル特化であって、バスケの戦術や基本的なテクニックに関しては最後まで素人に毛が生えた程度というバランスは秀逸。性格や外見はかなりド派手な花道なのに、それに反してコツコツとした努力や練習の過程が極めて魅力的に描かれ、初心者成長物語としての完成度は傑出していました。特にシュート2万本の合宿シーンは不思議な感動すら生み、そこで呟かれる「明日オヤジに聞いてみよう」は作中全体から見ても最上位の名台詞だと思っています。
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