出典:スパイラル ~推理の絆~

スパイラルは最初から最後までずっと面白かった漫画ではあるものの、中でも私が特に夢中になって何度も読み返していた章は校舎内におけるVSカノン編でした。熱中の理由は物語の構成や目まぐるしく変化していく展開が極めて魅力的だったからなのですが、同時に章ボスだったカノン君のキャラクター性に強く惹かれていたという要因も大きなウェイトを占めています。彼は物語中盤からの登場なのでブレチル組では最も後発だったものの、その圧倒的なインパクトによって心を鷲掴みにされ、一気に本作屈指の推しへと駆け上がりました。

様々なタイプの頭脳戦が描かれたスパイラルにおいても「知力によって武力に挑む」というテーマにおいてはカノン君との対決こそがその極地。純粋な戦闘能力で言えば他に比類するキャラは誰一人おらず、それなりに戦い慣れている理緒や香介らが束になっても敵わないですし、悪魔のクローン火澄ですら直接戦闘では相手になりません。この突出した強さそのものが彼の魅力の一端なのは間違いなく、翼ある銃(ガン・ウィズ・ウィング)という異名もまた厨二心を最高に疼かせてくれました。しかし、その戦闘力だけが彼の魅力かと言えばそれは違います。月臣学園に転入してきた直後の自己紹介シーンなどは印象的ですが、普段の彼は絵に描いたような好青年で人当たりも良く、とても温和な性格です。しかもそれは演技で猫を被っているわけではなくて、休日には趣味のぬいぐるみ探しに勤しんでみたりと荒事さえ絡まなければ素で能天気なのでしょう。しかしそんな彼がいざ戦闘になれば鋭く凛々しい表情を見せまくるわけで、作中で描写された表裏のギャップには強烈に魅了されました。

しかしカノン君の最も大きな魅力は「頭抜けた戦闘力」や「温和な性格」といった表層的な部分ではなく、その内面に秘めた危うさにこそ存在しているというのが私の考えです。本人は既に腹を括り、たとえ親友や同胞であろうと殺す覚悟で来日し、実際アイズの胸にもナイフを突き立てました。しかし無意識下では冷徹に徹することができず、仲間に銃を向けながらもずっと苦しみ葛藤し続けている不安定な精神性こそが彼の本質。私はカノン君の「強さ」と同時にそうした「弱さ」にも心から惹かれており、彼は2つのアンビバレンスな魅力によって成り立つ極めて繊細なキャラクターなのだと思っています。
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