1992年公開の映画 シンエイ動画

私がドラえもん映画に親しんでいたのは大山ドラの中期。大体「竜の騎士」から「創成日記」までの約10作品を視聴したのですが、その中でも特に印象に残り、録画したビデオテープが擦り切れるほど観返していたのが本作です。「日本誕生」「アニマルプラネット」「ブリキのラビリンス」あたりも大好きではあるものの、あえてNo.1をひとつ選ぶとすれば私は雲の王国を推挙するでしょう。

映画が上映された1992年当時の世情を強く反映しており、環境問題に深く焦点を当てている本作。描き方によってはそこが鼻についたり押しつけがましく感じかねないのですが、本作はそのあたりのバランスが上手く、単に「自然は大事にしよう!」という通り一遍のお題目を掲げているものではありません。環境保護を推し進めている天上人達はお世辞にも「正義感に溢れた人格者」とは言えず、過激で狭量な思想に染まった横柄な態度が目立ちます。かといって環境破壊を許容しているわけではなく自然を汚す密猟者達もまた悪辣な人物として描かれており、ドラえもん達にとっては双方共に仲良くできない相手。優先するのが自然だろうと人間だろうと極端な偏重は危険であり、無意識のうちに自然と人間との調和が大切だと理解させてくれる作劇は見事と言う他ありません。

何度も視聴しただけに印象に残る場面も多く、例えば序盤に雲のブロック化や整地をしながら、少しずつ「王国」を形作っていくクラフトシーンのワクワク感は甚大でした。反面楽しいばかりではないショッキングな描写もあり、未来の時系列におけるノア計画発動後の世界などは視聴したことのあるドラえもん映画の中でも屈指のトラウマとして今でもずっと忘れられない一幕です。ですがそれ以上に心に残る本作最大の名場面は、密猟者達に王国を乗っ取られた後、部屋を飛び出したドラえもんが猛ダッシュして雲戻しガスのタンクに突撃するところ。ここはドラえもんの覚悟と自己犠牲とが極めて鮮烈に描かれ、テーマソングをアレンジしたBGMと相まって観返すたびに胸が締め付けられるほどの心痛を味わいました。起承転結それぞれに魅力が詰まった至極の名作です。
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